強さとやさしさ併せもち10年先を見据えた区政 はやお恭一

医療と介護の連携のあり方について

2020/11/23 6:21 に 早尾恭一 が投稿

 日本の少子高齢化は、今、世界でも例を見ない速さで進んでいます。社会保障政策の観点からは、団塊の世代の全てが75歳に達する2025年を直近の目途として、医療・介護の提供体制の整備が推し進められています。その理由は、75歳を超えると、医療・介護のニーズに大幅な増加が想定され、質的にも量的にも、今以上の対応が求められるためです。これまでは「病院完結型」と言われるように、ほとんどの人が病院で最期を迎えてきました。しかしこれからは「地域完結型」といって‘ときどき入院、ほぼ在宅’という言葉にあるように、病院から地域に戻り療養生活を送りながら最期を迎える、つまり医療と介護が切れ目なく一体的に提供されることが求められています。

 2014年に成立した「医療介護総合確保推進法」によって、都道府県が必要病床数を推計し、それらをもとに「地域医療構想」として地域の医療提供体制の将来のあるべき姿を描き、医療計画を策定するといった、大きな改革が始まりました。特に「地域医療構想」では、設定された構想区域ごとに「地域医療構想調整会議」を聞き、病床機能の機能分化や連携について、調整を図っています。本区の構想区域は、東京都の「区中央部」であり、本区のほかに、中央区、港区、文京区、台東区の合計5区で構成されています。

 一方で、区ではそれらの地域医療構想を踏まえた「都道府県の医療計画」と、区が策定している「介護保険事業」との整合性を図りながら、それぞれの計画を進めつつ、病床機能の再編により減ってしまう入院ベッドの分を、病院の外、つまり在宅医療や介護施設、高齢者住宅など、地域において受け入れることになります。

 特に慢性期医療に該当する方々が在宅医療に移行できるのか、在宅での療養が難しい場合は特養や老健などの介護施設で受け入れができるのかなど、本区の将来の描き方が高齢者のQOLを左右するといっても過言ではなく、中学校区を単位とした地域包括ケアシステムとの連携・協働は必要不可欠になります。本区の高齢化率は、今後劇的に増える予測はありませんが、世帯別に見ると、独居や高齢者のみの世帯は着実に増えていくと予測されており、地域包括ケアシステムの充実は本当に切実な問題です。


 実は九段坂病院併設のかがやきプラザには、計画の段階では医療と介護をつなぐ訪問看護ステーションを開設する予定でしたが、結果的には今現在、開設に至っておりません。いま一度、かがやきプラザが病院機能との合築により併設されているメリットを吟味し、2025年、さらには団塊ジュニアが65歳以上となる2040年を地域で支えられるよう、医療と介護の提供体制を整える必要があると考えます。

 また、地域包括ケアを進めていく中では、そのような量的提供体制を整える一方で、提供するケアの質の向上も求められます。特に、訪問看護や介護サービスの事業所は小規模なところが多いため、お互いの情報交換や研鑽の場として、区全体の統括的な支援をする拠点、いわゆるセンター・オブ・センターのような機能の準備も必要です。

 加えて、23区の中で唯一、介護老人保健施設がない本区では、回復期に当たる高齢者は近隣区の医療・介護施設を利用している状況です。遡ること平成20年第三回定例会において、医療と介護の連携の必要性、そして本区にまだない老健施設の必要性について、私は一般質問をしています。当時は、地域包括ケアのスキームもまだなく、医療は医療、介護は介護という既成概念も残っている中で、療養病床再編という国の方針により医療界が混沌としていた時期でした。その一般質問の際、石川区長からは、介護施設の整備において、特養以外の選択肢として老健施設の設置は優先的に考えていく必要がある、老健施設にかかわるニーズ等の把握や運営の課題等を早急に整備し答えを出していきたいとの答弁をいただきました。その後、高齢者総合サポートセンターとしてかがやきプラザが開設されましたが、結果的には区内に老健がない状況は変わっていません。今後、回復期や慢性期の医療ニーズを抱えながらも、在宅で過ごさなければならない高齢者が増えることに鑑みると、病院と在宅とをつなぐ中間施設として、また、在宅で介護中の家族のレスパイト施設として、在宅医療継続の支援をする役割を担う老健は、住みなれた地域に必要なのではないかと、改めて感じているところです。

<令和元年 第3回定例会(10月3日)>