強さとやさしさ併せもち10年先を見据えた区政 はやお恭一

文化事業の総合的な戦略とビジョンについて

2020/11/23 5:57 に 早尾恭一 が投稿   [ 2020/11/23 5:59 に更新しました]

 本区の文化施策に関しては、文化財保護の問題を中心に、継続して区議会で質問を続けてきました。平成30年第三回定例会では、本区の史跡等、指定されている文化財(江戸城外堀跡や国指定史跡常盤橋門跡常磐橋等)の保全と整備について、未執行のまま十分な説明もなく予算額が膨らみ続けていることへの見解を求め、第四回定例会では、「文化財保護法」および「地行法(地方教育行政の組織及び運営に関する法律)」の一部改正に伴い、今後本区では文化財保護に関する事務の所管をどのようにするのか、また新体制における教育との共存という点でも「文化財の価値」の維持にどのように取り組むのかを問うてきました。

 特に、外濠グラウンドの整備計画においては、予算の執行には、隣接する新宿区との合意のほか、工事の前に文化財の許可手続きを踏まえる必要があります。その手続きが進まないため予算未執行の状態が経年的に続いており、さらに予算が使われないまま、予算額だけが膨らんでいる状況です。予算の査定は適切にされているのか、その金額に妥当性はあるのか、様々な疑問が湧いてきます。

 これまで本区では、教育委員会が所管する事務のうち、①学校における体育に関することを除くスポーツに関すること、及び②文化財の保護に関することを除く文化に関すること、の2つの事務については、区長部局が管理・補助執行を行ってきました。しかしながら、今回の経緯経過を振り返ると、文化財という本来教育委員会が主体となって講ずるべき案件について、教育委員会の動きが見えず、その一方で、区長部局が中心となって進めてきたことが浮き彫りになっています。

 「地行法」の改正を受け、条例を制定すれば、今後は文化財についても区長部局がその事務を所管・補助執行できるようになります。しかし、移管前の現段階ですら、文化財に対する教育的視点・文化的価値の見識を有する教育委員会のアプローチがないまま、区長部局による文化財への補助執行が行われようとしている現状に鑑みると、条例改正の前にこれまでの執行方法をまずは総括する必要があるのではないかと考えます。

 文化財はその歴史的な背景も含め、現代に求められる利便性や効率性を度外視した価値観を以って伝統を守り、教育に活かすなかで後世に遺していく必要があります。そのような視点からの示唆に富んだGO/STOPをかける存在として、教育委員会が役割を果たしていくべきであり、特に文化という特性を考えると、事業を執行するまでの検討プロセスを大切にする必要があります。そのためには、教育的視点に基づいた知識や経験を備え、文化施策に対し見識ある判断ができる人材の育成が求められます。また、区長部局の補助執行によって、文化行政が利便性や効率性重視に偏らないように、元来の執行機関である教育委員会がグリップを効かせ、全体としてバランスの良い判断に導いていく必要があるのではないでしょうか。

 本区は、昭和59年に「教育と文化のまち千代田区宣言」を行いましたが、その宣言には、当時進んでいた都心部の空洞化に歯止めをかけ、文化の香り高いまちづくりを進めていくという区の強い思いが込められていました。これまでも、祭りや文化財など有形無形を問わず、地域住民をはじめその取り扱いには非常に丁寧に大切に伝統を尊重した取り組みを重ねてきた経緯があります。今後本区が取り組む文化事業についても、区全体の事業の視点からどのように位置づけられ、どのような考えのもと展開していくのか、そのビジョンの必要性について働きかけました。

<平成31年 第1回定例会(2月21日)>